特集コラム 『 民間英語資格・検定試験の傾向と対策』

はじめに

2020年度から始まる新入試制度には2つの大きな特徴があります。国語と数学に記述式問題が導入されることと、英語の民間試験が活用されることです。

朝日新聞と河合塾の最近の調査では、1年前の調査と比べ、大学入学共通テストの採用に後ろ向きの大学が増えているようです。その理由として、試行調査で正答率の低い記述式問題が多かったことや、自己採点と実際の得点とに大きな誤差があったことが挙げられています。また、英語の民間試験の導入には半数近くの大学が「問題あり」と答えています。

私も導入には反対です。受験料が高いこともさることながら、その評価方法が問題だと思うのです。

新入試制度では、それぞれの試験のスコアはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)と対照され、6段階(A1~C2)に相対評価されます。たとえば、CEFRのB1に相当するスコアは、実用英語技能検定(英検)では1950~2300、TOEFLでは42~71、TEAPでは225~308、GTECでは960~1189となっています。ということは、試験によっては素点が100以上違っていても、CEFRの段階評価は同じになってしまうのです。

受験生は志望大学にスコアも提出しますが、それぞれの試験が1点単位で、たとえば、A試験の100点がB試験では1755点、C試験では203点に対応するといった細かな基準がなければ、試験間の公平な評価はできません。そして、それはもちろん現実的には不可能でしょう。

もろもろの問題を抱えている新入試制度です。文部科学省の方針が大きく転換する可能性も否定しきれません。とはいえ、弊塾が大学進学塾として、しっかりとした対策を講じることは当然の責務です。

大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験の特徴、難易度、対策をまとめることで、受験生の不安を少しで解消できればと願います。

今回はReadingとWritingを取り上げます。

 

各テストの特徴と難易度

 

① 実用英語技能検定(英検)

○ 2級

Reading

短文の空所補充問題が20題出題されます。単語の知識を問う問題が10題、熟語の知識を問う問題が7~8題、文法問題が2~3題。単語は大学入試の標準レベル、熟語も同様ですが単語よりは少しやさしめです。文法の頻出テーマは準動詞、接続詞、時制、仮定法といった従来の大学入試問題でおなじみのものです。

中(長)文読解問題は空所補充が2題(250語程度)、Eメールの内容一致が1題(200語程度)、長文の内容一致が2題(500語程度)です。英文自体の語彙、難易度は大学入試のMARCHレベルですが、パラグラフと設問が完全に一致しているために、解答を出すのは少しやさしいでしょう。制限時間(ReadingとWriting合わせて85分)も比較的余裕があり、慎重に消去法を使う時間もあります。

 

Writing

与えられたトピックに関する自分の意見とその理由を述べる自由英作文が1題だけ出題されます。指定語数は80~100語。テーマは日本社会に関するものが中心です。理由のヒントが3つ与えられますが、必ずしもその観点から書く必要はありません。テーマも指定語数も標準的な国公立二次レベルですが、時間的には(25~35分使える)少し楽でしょう。

 

○ 準1級

Reading

短文の空所補充問題が25題出題されます。単語の知識を問う問題が21題、熟語の知識を問う問題が4題、文法問題はありません。単語は大学入試をはるかに超えるレベルですが、2級に合格する語彙力があれば消去法で解答可能。熟語は基本動詞を使った口語的なものが多く、大学入試で頻出なものはほとんど出題されませんので、大学入試用の熟語集では対応できません。

中(長)文読解問題は空所補充が2題(300語程度)、長文の内容一致が3題(500~600語)です。英文自体の語彙、難易度は早慶レベルでも、パラグラフと設問が完全に一致しているために、解答を出すのは早慶よりもはるかにやさしいでしょう。2級と同様に、消去法を使う時間もあります。

 

Writing

与えられたトピックに関する自分の意見とその理由を述べる自由英作文が1題だけ出題されます。指定語数は120~150語。テーマは日本社会に関するものが中心です。4つ与えられたポイントのうち、2つを使わなければならなりません。テーマも指定語数も標準的な国公立二次レベルですが、2級と同様に、時間的には(25~35分使える)楽でしょう。

 

② TOEFL iBT

Reading

短文の空所補充問題はなく、約700語の長文が3(4)題。設問は段落ごとで、文脈と無関係な語彙の問題もあります。全体的に難解で、とくに最後の要約問題は難問です。一般的な受験生では太刀打ちできないでしょう。制限時間は60(80)分ですが、全く足りません。Readingに関しては最難関と言えましょう。

 

Writing

2種類の問題が出題されます。

タスク1 まず300語程度の英文を3分で読み、次に英文とは異なった観点からの講義内容を音声で聞いたあと、英文の内容との対立関係に触れながら、講義を150~225語(超えてもかまわない)の英語で要約します。制限時間は最後のWritingだけで20分。ListeningとWritingの融合問題であり、特別な準備が必要です。平均的な受験生には荷が重そうです。

タスク2 英検と同じタイプ。与えられたトピックに関する自分の意見とその理由を述べる自由英作文です。指定語数は300語以上で、制限時間30分。トピックは英検と似たものですが、英検に比べ、語数がはるかに多く、時間が足りないでしょう。

 

③ TEAP

Reading

短文の空所補充問題が20題出題されます。すべて語彙問題。単語の知識を問う問題が16題、熟語の知識を問う問題が4題です。レベルはMARCHや英検2級とほぼ同等か、少しやさしいでしょう。

次に、グラフの読み取りが5題、Eメールや掲示などの短文の内容一致が10題出題されます。グラフの読み取り(Part 2A)は判断力を必要するため、受験生を苦しめるでしょう。Eメールや掲示などの短文問題(Part 2B)も内容がつまらない割には、意外と手ごわいです。

最後に、中文(250語程度)の空所補充問題が2題と、長文(500~600語)の内容一致問題が2題。設問から先に読めば、ここは比較的簡単に解けます。

 

Writing

2種類の問題が出題されます。

タスクA 300語程度の英文を70語で要約する問題です。

タスクB グラフを読み取り、異なる2つの解決策が書かれた英文を読み、2つの解決策のうち、どちらを支持するかを200語で書きます。制限時間は全体で70分。時間も内容も比較的に取り組みやすいでしょう。

 

④ TOEIC

Reading

短文の空所補充問題が30題出題されます。単語の知識を問う問題が20題前後、文法問題が10題前後。熟語は出ません。文法は接続詞、前置詞を中心とした品詞の区別などで、一般の大学入試問題よりも簡単です。

読解問題はすべて情報の読み取りです。長文はありませんが、後半は2つ以上の資料から情報を読み取らせるので、かなりやっかいです。文法や語彙の知識を問う問題も含まれています。情報処理に重きが置かれ、英語力そのものを問うテストではないとの印象です。

 

Writing

3種類の問題が出題されます。

1 写真説明問題。与えられた2語を用いて、写真を1文で説明します。5題あり、制限時間は8 分。文法的に正しい英文、とくに時制と接続詞(after, when, whileなど)が正しく使えるかが問われます。時間は足ります。

2 25~50語でEメールの返事を書く問題。2題あり、制限時間はそれぞれ10分。メールの内容は町の案内、客からの注文、ホテルに対するクレーム、管理会社や上司に対する質問や要求といったもの。時間は足りませんし、難易度もかなり高いと思います。

3 あるテーマについて意見を述べる問題が1題。指定語数は300語以上で、制限時間は30分テーマは英検やTOEFLと似たものですが、TOEFLと同様に語数が長く、平均的な大学受験生にとっては、時間が足らないでしょう。

 

⑤ IELTS

Reading

短文の空所補充問題はありません。

三種類の文章が出題されます。設問は40題で、制限時間は60分です。制限内の語数で答える問題、文完成問題、図表完成問題、情報マッチング問題など、問題形式は多岐にわたり、かなり特殊です。内容一致問題には、YES、NO以外にNOT GIVENがあり、受験生を悩ませることでしょう。1000語近い長文もあります。

 

Writing

2種類の問題が出題されます。

タスク1 いろいろなグラフを読み取り、比較・対照しながら説明するものです。20分で150語以上書かなければなりません。

タスク2 英検と同じタイプ。与えられたトピックに関する自分の意見とその理由を述べる自由英作文です。指定語は250語以上で、制限時間は40分。TOEFLよりは少し楽ですが、英検に比べるとはるかに大変です。

 

⑥ ケンブリッジ英語検定(CEFR B1レベル)

Reading

短文の空所補充問題はありません。メモの読み取り、情報マッチング、長文(500語程度)の内容一致など5つのパートに分かれています。長文の中で語彙や文法知識を問う問題もあります。内容、難易度ともに標準的です。

 

Writing

3種類の問題が出題されます。

1 空所に3語以下の単語を補い、同じ意味の文を完成させます。5問あります。

2 与えられた内容にそったEメール文を35~40語で書きます。1問です。

3 手紙の返事、もしくは与えられた書き出しに続く物語を100語で書く問題です。これも1問です。

制限時間はReadingと合わせ90分。時間も十分足りますし、難易度も適当で、英検と並び、一般的な受験生にはもっとも取り組みやすいでしょう。

 

⑦ GTEC

Reading

短文の空所補充はありません。英語圏の国で大学生活を送ることを前提としたEメール、掲示、表の読み取り問題が40題(20文前後)出題されます。解答の参考部分が簡単に見つかり、センター試験の同種の問題よりはるかにやさしいのですが、最後の内容一致の英文はかなり専門的内容で難解です。

 

Writing

3種類の問題が出題されます。

1 簡単な質問に答える問題が1題(4問)。制限時間(4分)、難易度とも問題ありません。

2 30~60語のEメールを3通書く問題です。制限時間が各7分で、一般の受験生には足りないでしょう。

3 まず、グラフを読み取り、125~175語でまとめます。制限時間15分。つぎに、専門家の参照意見を2つ引用しながら、1に関連したテーマについての意見を250語以上で書きます。制限時間25分。問題自体は標準的ですが、語数を考えたとき、制限時間25分は短すぎます。

 

どの試験を選ぶか?

 

どの民間試験が向いているかはもちろん一人一人の受験生によって多少は違いますし、Aテストの100点とBテストの250点がCEFRで同じ評価だとして、どちらの点数が取りやすいかを判断するのはなかなかむずかしいので、テスト自体の難易度や対策の立てやすさから判断するのが妥当と思われます。

この点から考えますと、帰国子女以外の一般的な受験生にとってはやはり英検(とくに2級)が適当でしょう。私大や国公立二次試験の準備と無理なく、無駄なく対策が立てられます。

英検に続くのがケンブリッジ英語検定(CEFR B1レベル)でしょうか。それ以外の試験はそのための特別な準備が必要となります。受験生の負担は大きく、正直な感想として、あえて英検以外に手を出す理由はなさそうです。試験によっては解答がすべてパソコン画面で行われますので、パソコン操作の得手不得手も問題になります。

 

Writing対策

 

与えられたトピックに関する自分の意見とその理由を述べる自由英作文は、ほとんどすべての民間試験で出題されます。国公立二次試験でも同様ですので、きちんとした対策が必要です。

自由英作文対策のほとんどの参考書は、パラグラフ構造や書き方に重きを置いて指導しています。すなわち、まずイントロダクションがあり、次にボディー、最後にコンクルージョン、そしてそれぞれをどのように書くかといったように。

しかし、構造や書き方がわかっていても、問題を見てから書く内容を考えていたのでは、制限時間内に指定語数をクリアした、文法的にも論理的にも破綻のない英文を書くことは受験生には至難の業です。受験本番では、アドリブがきかないことを肝に銘じてください。

したがって、頻出テーマに関して、書くべき英文をあらかじめ準備しておく必要があります。ただ、暗記には限界があります。難関大学を受験するみなさんは英語以外にもいろいろな科目を勉強しなければならず、英語だけでも他に三技能に取り組まなければなりませんから。

そこで、いろいろなテーマに応用ができる汎用性の高い英文を覚えることが重要となります。たとえば、50語の英文を頭に入れておくことで、3題にも4題にも対応できるような英文です。

具体的にそれがどんな英文であり、また、どんな単語や英文を暗記すべきかをお知りになりたい方は、拙著『もっと減点されない英作文・改訂版』のUnit4「テーマ別自由英作文対策」をご参照いただくか、弊塾にご連絡いただき、河村のカウンセリングをお受けになることをお勧めいたします。

 

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