共通テスト(英語)の、正体見たり!

共通テストの前身であるセンター試験(1990年~2020年)、さらにそ

の前身である共通一次試験(1979年~1989年)からこれまで、大学入試センターが実施した共通一次テストはトータルで45年の長きに渡り、私はそのうち、41年をリアルタイムで経験いたしました。

その経験に基づきまして、共通テストの性質やその対策についてお話したいと思います。

 

1 生徒や教師の勘違い

 

共通試験(共通一次試験、センター試験、共通テストをまとめてこう呼びます)は、それまで各国公立大学で実施されていた1次試験を全国共通に行うために始まりました。

記述で難しい問題の多い2次試験に先立つ、マークシート式のテストですから、生徒の間でも教師の間でも、共通試験は基礎レベルという認識が生まれたのは無理からぬことでした。

しかし、これがすべての悲劇の始まりでした。

共通試験とはどのような試験かと問われれば、私は「試験が終わったあと、受験生10人のうち9人が失敗したと感想を漏らす試験」と定義します。これは受験生が自分の実力を過信、楽観しているだけでなく、共通試験が何となく基礎だと思っているせいなのです。

冷静に考えてください。2日で5教科7科目をこなさなければならないテストが基礎なわけがないのです。しかも、かなり厳しい制限時間の中で。優秀な生徒でも、必ずどの教科かを大失敗します。英語に関しては、かわいい絵にだまされてはいけません。

生徒はどうしてもマーク式よりも記述式のテストが難しいと思いがちですが、採点を考えると、○か×かのマークより、部分点がもらえる記述の方が楽だと言えます。

あなたが来年度の共通テストの得点予想をするさい、最低でこれぐらいは取れそうだという点の9割だと考えてください。たとえば、数学ⅠAは悪くとも70点はいけるだろうと思っている人は63点です。

共通試験の性質上、これは失敗でも何でもなく、残酷ですが妥当な結果なのです。

 

2 共通試験の英語とはどんなテストなのか?

 

共通試験の基本は語彙力にあります。これは共通一次試験の時代から一貫した方針です。

語彙力が重要なのはどの英語の試験でも同じですが、語彙力を問うのにあれほど手の込んだ読解問題にし、一見すると語彙力の問題に見えない問題を作るところが大学入試センターのスゴさです。

それに比べると、どの予備校の模試もどの出版社の問題集もお粗末なもので、お話になりません。共通試験を作成できるのは、残念ながら、大学入試センターだけのようです。

共通試験は当初から、知能テスト、情報処理能力テスト的性格が強いと言われてきました。確かに、英語の試験はどんなものであれ、知能が高い人は語彙力さえ身につければ、たいていの場合何とかなります。共通試験はその代表と言えましょう。

段々と出題数が減っていったとはいえ、センター試験までは文法問題がありました。私は文法問題の存在が共通一次試験とセンター試験を、まだ英語の試験に踏みとどまらせていたと思います。文法の重要性という話ではありません。文法の問題はあまり頭の良し悪しが関係せず、努力の成果を問えるからです。やはり試験というものは、努力が報いられるものでなければと考えるのは、私の感傷でしょうか。

共通テストの英語は英語のテストと考えない方がいいのかもしれませんね。地頭で決まる試験は大学にとって好都合でも、受験生にとっては救いがありません。

分析はできても、対策は立てられない試験

これが、私のもう1つの共通試験の定義です。

とはいえ、現実は現実として受け止め、対処しなければなりません。まずは語彙力、とくに単語を言い換える力を磨くこと。私は塾生に、共通テスト直前は単語と熟語を徹底的にやるように指導します。

また、解法としては、できる限り一般的な選択肢を選ぶというアプローチが有効です。これに関しては、当ホームページの『共通テスト、リーディングのエッセンス』をごらんください。

 

 

3 共通テストの難しさはどこにあるのか?

 

まずは、英文の量です。

共通試験の性質は最初から変わっていませんが、読まされる英語の字数は次第に増え、第1回目の共通一次試験と今年の共通テストとでは、比べものにならないほど激増しました。あれほどの分量を80分で読みこなすのは至難の業です。

しかし、分量もさることながら、共通テストの英語問題が最もやっかいな理由は、設問と正解のヒントの距離にあります。

偏差値の低い大学の英語問題は設問自体にヒントがあります。本文を読まなくとも、設問を見ただけで解ける問題がほとんどです。文脈の理解は不要なのです。

ところが、東大や早慶の問題は文脈の理解が中心となり、正解のヒントが設問部分からかなり遠く離れていたり、段落全体で考えなければならなくなります。それでも、慶応大学経済学部の大問2のように問題が段落ごとに出されるのであれば、その段落の中でヒントを見つければいいので、比較的に楽です。

共通テストは設問のヒントや根拠が遠いだけでなく、何カ所かにちりばめられています。いささかオーバーではありますが、英文の大海の中で、短い制限時間内に真珠を見つけ出す作業が求められているのです。

 

では、これまでお話した共通テストの正体を実感していただくために、今年の問題から典型的な問題をピックアップして、具体的にご説明したいと思います。

 

 

4 2024年共通テストの注目問題

 

① 第2問 A

 

 

将棋の藤井八冠にあやかったタイムリーな問題です。そう言えば、共通テストの設問は藤井八冠ばりの『毒まんじゅう』がいたるところにばらまかれていますね。

本題に戻ります。問4の正解④を導き出すには、Invitationの3行目にある(thinking) deeply without distractionsとMember Commentsの1つ目にあるmore focusedに注目し、しかもその言い換えであるimprove concentrationが理解できなければなりません。

また、問3は設問にopinionとあるので、ヒントはMember Commentsの中だけを見ればいいので楽ですが、ここも正解①のcompare different gamesはMember Comments2行目のhave certain similaritiesを言い換えたもので、coolもinterestingに変わっています。語彙力を問う単語の言い換え問題、これが共通試験のエッセンスです。

 

② 第2問 B

 

問1の③は間違っていますが、そのヒントは本文の第4段落、mid-level plan(=the Standard Plan)の中ではなく、第2段落最終文、All plans ~ check-upにあります。このようにヒントが離れているのが共通テストの特徴です。対策としては、各段落の最終文に注目することです。段落の最終文(とくに、butやhoweverに続くとき)が設問のヒントになるのは、あらゆる英語の試験に共通した重要ポイントです。また、正解①の中にあるavailableは形容詞としては最も重要な単語の1つ。ここにも、共通試験が語彙の試験だという性質がよく出ています。

問5の正解②が共通試験の、またすべての英語の試験にも当てはまる『一般的選択肢』の問題です。これは正解の選択肢の特徴は具体的ではなく、一般的なものだというものです。たとえば、「トムがフランスを旅行中にどんなことが起こったか」という設問があれば、正解は「地下鉄でスリに財布を盗まれた」や「ホテルの予約が取れていなかった」などという具体的なものではなく、「いくつかの不快な経験をした」という具体性に欠けた選択肢(不快な経験は何かが不明)なのです。

本問では、②のtravel preparationsが具体的にどんな準備なのかがわからないのに対し、①のsmartphone appや③のthe US medical systemは具体的な内容です。

 

③ 第4問

 

 

これはなかなか厳しい問題です。

まず、空所27の文の主語majorityに注目します。次に、棒グラフのSleepingが38人中32人であることを確認。最後にS4のコメント最終文、we often ~ sleeping!で、ようやく正解⑤④が導かれます。majorityという語を見落とし、棒グラフをチェックせず、②⑤という誤った選択肢を選んだ受験生も多いのではないでしょうか。sleep = take napsの言い換えもポイントになっています。

 

④ 第6問 B

 

③(もう1つは②)と正解を出すには、まずNegative Effectsが書かれているのが、第7段落であること(第1文のbut以下に着目)を確認した上で、第3文後半にあるnumb hands(しびれた、無感覚の手)の意味がわからなければなりません。numb hands = lose feeling in your handsです。

④を選んだ人もいるのではないでしょうか?最終文に、can even burn a person’s skin if they are touchedとありますからね。ところが、設問にはWhen eating ~とあります。触った場合ではなく、食べた場合の話なのです。設問をしっかりと読むことは、『毒まんじゅう』を口にしないですむ最大の防御策です。

 

 

いかがでしたでしょうか。少しはご参考になったでしょうか?

また、共通テストの解法や対策について何か思いつきましたら、アップしたいと思います。

河村一誠