今回は、微妙なお話をいたします。
ズバリ、『大学受験は、出身高校で決まるか?』。身も蓋もない、それを言っちゃあ、おしまいよ、的な内容です。
トップの進学高に通う生徒が大学受験で高い実績を出すのは、これはもう自明の理です。理由は4つあると考えます。
○ 一流進学高はなぜ大学受験に強いのか?
まず、大学受験において、高校入試時、15歳の段階での学力がほぼ絶対的であるということです。国語の理解能力があるか、まあ、簡単に言えば、地頭ですね。地頭の良い生徒はたとえ知らなくても、またわからなくても、問題を解いてしまうことが多々あります。共通テストがその典型です(『共通テストの、正体見たり!』をぜひご一読ください)。
2つ目は、高校の環境。生徒が誰に一番影響を受けるかと言えば、教師でも親でもなく、同級生であることは論をまちません。たとえば、あなたが第1志望の公立高校に落ち、進学した私立高校が大学の付属高校だったとします。同級生の多くが最初から外部受験を考えておらず、2年の夏までは他大学を目指していた生徒も、1人2人と内部進学を選ぶようになります。3年生になり、大学受験の必要がなくのんびり生活している同級生を横目に見ながら、つらい受験勉強に取り組むことがいかに大変なことか。一方、一流進学高では、遅くても高1の終わり頃には、大半の生徒が大学受験用の勉強に取り組み始めます。周りの生徒が本気で勉強している中、自分だけさぼることは、さきほどの付属高校の場合と同様、至難の業です。この差は決定的ですね。要するに、朱に交われば赤くなる、のです。
3つ目が、勉強体力(私の造語です)の違いです。県下トップ高に通うA君と2番手高に通うB君が、高3の秋まで同じぐらいの成績であっても、A君がそこから入試までの2ヶ月、猛烈なラストスパートをかけられるのに対して、B君にはもう勉強体力が残っていません。
最後が、高校受験で失敗すると、大学受験でも失敗する可能性が高いことです。受験にも生徒の性格が大きく左右します。一発勝負の本番に強い生徒もいれば、メンタルが弱く、受験が近づくと体調を崩す生徒もいます。高校(中学)受験に失敗したということは、性格的に受験向きではなく、大学受験でも同じ轍を踏みがちです。私の経験上、大学(中学)受験で高校受験のリベンジを果たす生徒はかなり少数派に属します。一度あることは二度あるのですね。
もちろん、超進学高の生徒が全員一流大学に進学できるわけではありません。たとえば、都道府県トップの公立高校の200番以下であれば、ナンバー3の高校の上位50位以内の生徒の方が早慶に合格しますから。先生が『推薦入学は、敗北だ』なんて勇ましいことをおっしゃる私立の超一流進学高でさえ、最下層の生徒は『腐っても鯛』ではなく、『腐ったら深海魚』なのです。
しかし、それを踏まえても、『大学受験は通っている高校で決まるか?』と聞かれたら、私は少なくとも80パーセントはそうだと答えます。
合格者の高校名を出さない予備校がありますが、『○○高校なら、△△大学に合格するには当然じゃん』、『予備校の力じゃないじゃん』と思われたくないからです。同じ早慶に合格しても、高校のレベルによって、通った塾・予備校の指導力の評価は大きく変わりますので。
高校受験で失敗もしくは妥協した生徒にとって、大学入試は最初から全体の2割のパイを奪い合う敗者復活戦、というのが私個人の正直な感想です。
○ 塾・予備校の責務
さて、ここからが本題です。
にわかには信じられないほどの合格実績を公表する予備校があります。しかし、その合格者のほとんどがその予備校に通わなくても、いや、そもそも予備校に通わなくても合格できた、8割の受験勝者マジョリティーに属する生徒たちです。そういう生徒はいくつもの予備校をうまく利用しますね。
問題は残りの2割の生徒に対して、塾や予備校に何ができるかです。
新入試制度対策とか過去問のシステマティックな演習とか、大学受験に必要なことは多々あるのでしょうが、なんと言っても大切なのは生徒のやる気です。やる気があり、勉強を続けられさえすれば、どんな勉強方法でも成功します。そういう意味ではIT時代の受験も、明治時代の受験から何も変わっていないのです。
受験は9割受験生のやる気で決まります。ということは、受験マイノリティの2割の生徒に対して、塾・予備校にできることは2割の1割で2パーセントということになりそうです。
自戒の念を込めて申しますが、私たち塾・予備校関係者に最も求められているのは、生徒に対する謙虚さではないでしょうか。
一昔前の予備校のパンフレットには、『オレについて来い!オレが入れてやる』的な、頼れるアニキ的な景気の良い講師紹介文が散見されました。とんでもないことです。
志望大学に合格した生徒や保護者様から、『先生のおかげで、合格できました』と言われることがあります。場合によっては社交辞令ではなく、本気と思える顔つき口ぶり。そんなとき私は、『私のおかげで合格できるのなら、うちの塾生は全員合格しますよ』と謙遜ではなく正直に答えます。
認識すべきは、私たち塾・予備校関係者にできることが0でなく、2パーセントはあるという事実です。生徒のやる気を引き出すことも含め、そのわずかな2パーセントに全力を尽くす。そんな姿を私はカッコいいと思いますね。
いわゆるトップの進学高に通っていないみなさん、現実を正面から見つめ、雄々しく闘いましょう!
本気で大学受験に取り組む意志があるのなら、ぜひ一度弊塾にご来校ください。私たちにできることは、わずか2パーセントだけですが、その2パーセントは必ず果たすことをお約束します(結局、塾の宣伝かい、という声が聞こえてきそうです。もちろん、これは弊塾のホームページですからね)。
人気講師も本格派講師も、本質の理解も問題を解く裏技も、そんな違いはどうでもいい。生徒が合格するためにあらゆる手段を講じて、2パーセントを埋めるのです。
私の英語指導の中心は英作文です。大学でも社会でも、きちんとした英語が書けることは大きなプラスになります。受験勉強がその後の人生に資するとすれば、それはすばらしいこと。しかし、私が英作文指導に力を入れているのは、これまで何度かお話したように、あくまでも英作文の採点が甘く、効率的に高得点が取れるからです。共通テストが50パーセント台の生徒が二次の英作文だけでそれなりの国立大学に逆転合格することが現実にあるからです。
ただし、弊塾の空気には、生徒のやる気がにじんでいるようで、保護者に無理やり連れてこられたような、本気で勉強する覚悟のない体験生は入塾しません。
最後に、子供にただ夢を見させるだけの塾・予備校が多すぎるのではないでしょうか?夢を見させるのであれば、その夢を実現させる勇気も合わせて教えなければならないと思います。
河村 一誠